晴天のへきれき?
今は誰もいない事を確認して、日誌を閉じる。

「木村。人を好きになるっていうのは、どんな感じなのかな」

木村は目を丸くして、それから何故か姿勢を正した。


「すみません。質問の意図がよくわかりません」

「私、今まで人を好きになった事がない」

ヒラヒラ手を振ると、木村は胸の前で手を組んだ。

「先輩。真面目に言ってます?」

「普通に言ってますが」

木村は少し考えるように首を傾げ、一人で納得している。

「これで謎が少しとけました」

「なんのさ」

「先輩が、いろんな人から誘われても、全く気付かなかった訳がです」

「はぁ?」

キョトンとすると、木村は顔の前で指を振った。

「私は先輩の横に、何年座ってると思いますか」

「2年?」

「その間に、何人の男性が先輩に声かけにきてると思いますか」

声ならたくさんかけられるぞ。

皆、書類を私に持ってくるから。

「そのことごとくを、先輩は一刀両断に"忙しい"で終わらせてるんです」

「…………」


思い当たる節は、たくさんあるかも知れない。


「全部が全部、先輩に好意を持っていた訳じゃないと思いますが。去年の村田さんなんかは、明らかに先輩ラブでしたよ」
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