晴天のへきれき?
唐突に?
*****




夜中と言うには遅すぎて、明け方と言うには早過ぎる時間。

車もなく、人通りもない。

誰も通りはしないのに、信号は赤から青に変わる。

生温い風が身体にまとわりついて、離れていった。


ミュールの音が、辺りにこだまする。


その音を聞きながら、頭の中を整理しようと考える。

室井さんが落ち込んでいるって言われても、私、全然まったく気付かなかった。


だって……いつも無表情だし。


無表情で、淡々としているし。


ホントに能面。


「……………」


舞台の能は面を被る。

……もちろん、お面だから表情はない。


些細な動作。

響く音で表現する、そんな世界だと思っている。


悲しい


嬉しい


愛しい


怒り


歎き


苦しみ。


微かな俯きで、流麗な舞で体現する芸能。

演じる側の解釈で、世界感はまったく違うし、見る側によっても印象が違う。

静謐で美しいけど、あの小面の下には生身の人間がいて、葛藤がある。
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