晴天のへきれき?
「朝倉!」


イキナリ耳元で叫ばれて硬直する。


よく通る、低い声。


恐る恐る振り返って、冷たい視線の室井さんを見た。

「……あれ?」

「あれ、じゃない。何故お前はいつも思っていた方向とは逆を歩くんだ」


瞬きして首を傾げる。


「来た道を戻って……」


周りを改めて見回し、納得する。

ここはどこだろう。

見たことがない道だった。

「通ったことないですね」

「当たり前だ。馬鹿」


バ、バカ?


「馬鹿はひどいです!」

室井さんは腕を組み、大きく息を吸うと、それを鋭く吐き出した。

「こんな時間に一人で帰ろうとする自体、すでに馬鹿だろう」

「私だって、一人で帰れます!」


言うと、また冷たく見下ろされた。


「では、聞こう。大通りは逆だが?」


いや。間違えたけど。


「ここに来るまで、誰かに会ったり通る車はみたのか?」


いいえ、見てません。


「そもそも女性が独り歩きする時間か?」


えー……と。



「ごめんなさい」


素直に謝ってみた。
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