晴天のへきれき?
「謝罪なら受け付けない。僕も不注意だった」

室井チーフは呟いて、病室のドアの方まで歩き、ふと振り返る。

無言で眺められて、慌ててついて行った。

それから二人で蛍光灯が煌々と照らす、病院の静かな廊下を歩く。

外来受付の前で一礼するチーフに倣って、私も中の看護士さんに頭を下げ、自動ドアを抜けた。

少しだけ生温い風が吹き抜け、身震いする。

「君はタクシーに乗って家に帰りなさい」

チーフの淡々とした声に、顔を上げた。

「あ。いえ。私も一度、会社に戻って荷物を……」

お財布もないし、会社の制服のまんまだし。

「ロッカーキーを貸して」

え?

手を出されて、困惑する。

「木村さんに届けさせるから」

「あの。でも……」

「鍵。君のロッカーをこじ開けるのは嫌だし」


そりゃそうだ。


無言の表情の中に、断固とした意思を見つけて溜め息をつく。

仕方がないので、キーホルダーからロッカーの鍵を外して渡した。

「家はどこ?」

「……高台の方ですが」

呟くと、チーフはジャケットの内ポケットから札入れを出して、5千円札を差し出してくる。

「とりあえずタクシー代。後で返して」
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