晴天のへきれき?
怒鳴られて瞬きした。

胸の奥が、キュッとなる。


「誰だって荒れる時はあるんだ!」


睨みつけて来る。


その強い光を宿した瞳に……


何故か魅せられた。


そりゃそうだ。

室井さんだって、人間だもの。

怒る時だってあるだろう。



思い付かなかったけど。



溜め息をついて、煙草を消す。

「だからって、身体壊す様な飲み方はしないでしょ?」

淡々と向き合って、首を傾げ、視線を外されて苦笑した。

怒った顔の彼は、始めて見た。

その辛いような、苦しいような表情も。

それだけ、悩みが深いのは、すぐ解る。


でもさ。

身体を壊す必要もないと思うんだ。


「そりゃ、私は単なる部下ですけどね? 部下は部下なりに心配しちゃいけませんか」

「……いや」

小さな呟きに考える。

なんか、今、村田君の心理がちょっと見えたような気がする。

同じかどうかは、正直解らないけど。

好きな人には、幸せになってもらいたいもんだ。


せめて、こんなつらそうな顔はしてもらいたくない。

少なくとも、私は。
< 213 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop