晴天のへきれき?
「まぁ……以心伝心なんて言葉は、喧嘩して、和解して、長年連れ添った夫婦くらいなものでしょうよ」

それは、私にも言えることなんだけどもね。

「私の場合は細かいことはあまり気にしてこなかったし、相手の感情を推し量るなんて芸当、してないんです」

自己中心的で、自分が絶対だと思っていたようなもので……

「最近、同期と飲みに行く機会がありましてね。私って、自分で思っていたより子供なんだって、つくづくそう思いましたよ」

「朝倉が?」

そう。私が。

「思うんですけどね」

呟くと、室井さんは首を傾げてこちらに向き直った。

真っ直ぐな、落ち着いた視線。


そんな室井さん、


やっぱり好きだな。


「私たちくらいの年になると、変に臆病になると思うんです。社会の枠に捕われると言うか。自分を枠にはめたがると言うか」

「…………」

「素直になるには、失敗談もたくさん知っていて。うまくやろうとするには、少し若すぎて。特に私なんかは……」

親の泥沼な離婚を見て来ていて。

それが余計に、恋愛に対して夢見がちにさせたのかもなぁ。

私はそうじゃないと、誰かに証明したがって……
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