晴天のへきれき?
「……………」

結局……

朝市に来たお客さんやらなにやらで、駐車場に停車していた車内じゃ落ち着かなくて、室井さんの部屋に戻って来た。


と言うか、戻って来たくなかった。

無言で立っていたら、室井さんはクッションを積み上げたソファに座らせてくれる。

「まずは……だな」

冷蔵庫から出してきた麦茶をコップに注ぎながら、ちらっと私を見て来た。

「身体は平気か?」

「どこも悪くしてません」

「……俺はけっこう、無茶をした覚えがあるが」


そんな事をサラっと言うもんじゃないと思うんだ。

真っ赤になったのはわかるけど、室井さんは黙って麦茶の入ったコップを目の前に置いた。


「何故、言わなかった」

淡々とした口調にカッとなって、室井さんを睨みつけた。

「言えるはずないでしょうが! 28にもなって、まだバ、バ…」

「バージンだと?」

言われて撃沈しそうになった。

クッションを持ち上げて、顔を埋める。

どうしてこの人は、そうも恥ずかしい言葉を淡々と述べられるのだろう。

「室井さんは、どうしてそうやって飄々としてられるんでしょうか……」

「いや……そうでもない」

「と言うか、そんな事どうだっていいじゃないですか。こだわらなくても」

「こだわりたいね」
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