晴天のへきれき?
瞬きをした。


いつかどこかで、聞かれた質問だった。


それは先週。

私が私の想いに気付いた日の話。


「別に……室井さんは何もしてませんけど」

こっちが勝手に好きになっただけで、室井さんが何かしたって訳じゃないし。

あの時は、こんな気持ちにすら気付いていなかったけど……

すぐに思い知らされた。


ただ、室井さんは無言で煙草を吸い、何かを考えている。

少し長くなって、落ちそうになった煙草の灰を、軽く灰皿に落とした。


「朝倉。質問だが」

「なんですか」

「キスの経験はあるか」

「…………」


ポカンとして顔を上げた。


急に、何を言い出すんだ

この人は。


「もしかして……だが。キスも昨日が初めてか」


ど、どうして……

何でそんな事を今聞くの!?


口をパクパクさせていたら、室井さんは納得したように頷いた。


「ありがとう」


な、何が!?


「キスも、昨日が初めてなんだろう?」


聞くなそんな事!


室井さんは煙草をくわえながら、ソファに沈み込んで行った。

「お前は、あんな状態の俺に夢と希望を託してくれた訳か」


淡々と言われて、また瞬きをした。
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