晴天のへきれき?
エピローグ?
*****




金曜日。

最近いつもの如く英文訳を頼まれて、今日もちょっと残業。

出来上がった清書を室井さんは眼鏡をかけて確認しながら、指先でボールペンを回してる。


けっこう回すな、この人。


「朝倉ぁ~?」

高瀬の声に顔を上げ振り返る。

「今日、朝に頼んどいた契約書。どこか知ってるか?」

契約書?

「朝一のヤツなら、あんたは木村から受け取ってファイルに入れてたわよ?」

高瀬は首を傾げ私を見る。

「ファイル?」

「確か青い、四角い……」


ガバッと高瀬が立ち上がった。


「第一営業部に、返したファイルだ!」

「はぁ?」


確かあの契約書、印鑑空欄だったよね。

つまり、うちの営業課の判もまだ押されていない契約書。

契約は契約として成り立っているけど、承認印がなければ成績にならない。

逆を言えば、他の営業部の印鑑を押されたら、そこの営業部の成績になってしまう。


「あんたって人は……営業部に契約を引き渡したの」

睨み付ける私に、高瀬はデスクで頭を抱えた。

「うわぁ~マズイって、絶対に取られるって」

「だから、いつも言ってたでしょうが!」

「あ~……」


情けない高瀬を、早良さんも見てる。

「おばかさんだねぇ……」

「うわぁぁぁ」
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