晴天のへきれき?
「し、知ってらっしゃるんですね」

「学生時代に見たことがある」


淡々と言われて苦笑する。


「若い女性の趣味にしてはかなり渋い」

学生時代に見るのも渋いと思うけど。

「若くもないですって」

26からすりゃ、28なんておばさんに近かろう。

お蕎麦の出前のお品書きを取り出して、室井チーフに渡す。

「何がいいですか?」

無表情でお品書きを眺め、ちらっと視線を上げた。

「いつもデリバリーなのか?」

「まさか。ただ買い物に行きそびれただけです」

「何故?」

「ちょっと昨日は疲れてて……」

頭をかくと、室井チーフは小さく溜め息をついた。

「短時間で仕上げるから」


何をだ?


「君だったら、後……一時間あれば余裕で仕上げていただろう?」

「なんの話しですか?」

「昨日の英訳の書類」

「ああいう挑戦は受けるタチでして……」

言うと、室井チーフはお品書きを返して来た。

「僕は山菜蕎麦」

「はい。了解です」
< 25 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop