晴天のへきれき?
そういう訳で、ちょっと高いイタリアン『Moon.L』に、私たちは来ていた。

「朝倉さん。酒豪だな」

淡々と話す能面チーフに、ワイングラス片手に微笑む。

「なんで室井チーフがここにいるんですか」

「……高瀬さんに呼び出された。きっと僕は財布がわりか、もしくはタクシー代わり」

淡々と呟いて、楽しく木村と盛り上がっている高瀬を見た。

一人でおごるのが嫌で、この能面チーフを引き込んだ訳ですか。

「災難ですね」

「別に」

「今日の残業は?」

「朝倉さんと高木さんのおかげで大丈夫」


あー……。

じゃ、今まであれを一人でやってた訳ですか……。

「まだアシスタント決まらないんですか」

「簡単には行かない」

「どんな条件つけたんですか?」

「ビジネス英語が出来て、英訳出来て、残業や出張もOKな人材」

「……そこまで求めちゃいますか」

「当たり前」

淡々と言って、グラスに入った烏龍茶を飲み、ちらっと私を見た。

「年下におごられるのは嫌でも、同期におごられるのはいいのか?」

「いいえ。復讐だったんですが」

「復讐…」
< 31 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop