晴天のへきれき?
「当たり前。やっと落ち着いて飲めるんだから付き合え」

「日本酒はあまり飲めませんよ」

「飲み口いいから、試してみろよ」

お銚子が運ばれて来て、目の前に新しい盃が置かれる。

それに室井チーフはお酒を注いでくれながら、少しだけ目を細めた。

「ホントは塩辛とか、もしくは粗塩とかで飲む方がうまいんだが」

「ずいぶんと粋な飲み方されるんですね。室井チーフはお若いのに」

「……2歳しか変わらないって言っただろうが」


あ。怒った。


「いただきます」

一口、日本酒を飲んで……

ちょっと目を丸くする。

大概の日本酒って、飲むと背中がざわってするのに、コレはそんなことはない。

「うまいだろ?」

室井チーフは手酌で盃をクイッと空けて、私を見てくる。

「飲みやすいです」

「うん。甘口なのもいいけど、俺は辛口の方が好みだな」

へぇ。

「詳しいんですか?」

「別に。ただ、南より北に行くにつれ辛口になっていく」

「あ~。新潟とか」

「越乃寒梅?」

「地酒、好きですか?」

「ああ。そうかもな」
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