晴天のへきれき?
「朝倉さん」

「はい?」

「今日の帰りに、何か予定はあるか?」

「ないっすよ~」

「そうか」


こんな朝から、残業でも頼むつもりかな?

と再度振り返ってみたが、すでに能面チーフは自分の席に戻って行く所だった。

おかしな人だ。

とにかく、よく解らない質問を飛ばしてくる有象無象に答えつつ、10:40には書類を上げ室井チーフの所に持って行った。



能面チーフが、出来立ての書類をチェックしてる。

と、

イキナリ眼鏡をかけたので、マジマジと見入ってしまった。


余程、驚いた顔をしていたらしい。


室井チーフはちらっと私を見上げ、溜め息をついた。

「文字を追うときには眼鏡をかける。そんなに目は悪くない」

「あ。そうですか」


いや~。

この無表情はともかく、声は良いんだよね。
低音だけど、しわがれてもいないし、どことなく甘く響くって言うか、とてもよく通る。


濁りがないと言うか?

透明感すら感じる声だ。


うん。

能で謡いをやらせても凄いかも知れないな。


「朝倉さん」

「はい?」
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