晴天のへきれき?
「え…いや」

無表情にも、一歩退きかけたチーフの前に私は立つ。

「私の上司にあたる室井チーフ。毒牙にかけないで」

「毒牙なんかかけないわよぅ。失礼しちゃう!」

ママはそう言って、ニコニコとカウンターに案内してくれた。

元々、蕎麦屋だったこの店は、内装も蕎麦屋のまま。

古い桧のカウンターに、4人掛けのテーブル席が2組。

そして、壁際にある棚にはズラリと地酒の一升瓶が並んでいた。

「珍しいじゃないの、あんたが男連れなんて」

おしぼりをくれながら言うママに、微かに苦笑する。

「上司だし?」

「上司だろうがなんだろうが男は男よぉ」

いやぁ。

まぁ、そうだけど。

「にしても、綺麗な男ね。お化粧はしないの?」

するかっ!!

したら恐いわ!!

「地酒が好きらしいから連れて来たのよ」

ちょっと疲れてそう言うと、ママはパチパチ瞬きしながら、地酒表を出して来た。

「だいたい揃えてあるわよ~。なんでも言って」


チーフは一瞬だけ躊躇しながら表を受け取り、目を細める。


「確かに……」


普通。

そこは目を丸くしないでしょうかね?
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