晴天のへきれき?
「注文は何にするぅ?」

「俺は、冷で黒帯を」

「私は枡で」

それぞれ注文して、ママは粗塩を小皿に盛ってくれた。

「おつまみはいる?」

「んじゃ、烏賊の沖漬けと山葵漬け」

ポンポン注文していたら、チーフは表を持ちながら、ちらっと私を見てきた。

「常連か」

「常連です」

「夜の常連ね♪ この子はコーヒー飲みに来ないし」

ママはニコニコと、枡にお酒を注ぎながら呟く。

「コーヒー?」

首を傾げるチーフに、重々しく頷いた。

「昼間は、喫茶店なんですよ。隣ですが」

「ああ。なるほど」

「コーヒーも旨いから昼も来いって言ってるのに、なかなか来ないのよ~」

「ちなみに、昼間はちゃんと男の格好してるらしいです」

「……そうか」

やっぱり退き気味のチーフにママは笑う。

「室井さん。取って食いやしないわよ?」

「あ。いや、失礼」

キチンと座り直して、チーフは背筋を伸ばす。

「あまり、あなたのような方に会う機会はないので」

「髭が邪魔ですよね」

「髭は昼間のトレードマークなのよねぇ」
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