晴天のへきれき?
「私?」

「そうです。例えば、先輩の事を好きだなぁって人が近づいてきても、先輩って単なる同僚として扱うんです」


同僚は同僚だし?


「結果、男の人は脈なしだな、と思って、離れていくんですよ」


また手を動かしながら、木村の言葉を考えてみる。


昔、付き合った奴は社外の人間で、当時、事務管理をしていた先輩に紹介を受けた人だった。


2・3回デートして、"付き合おう"と言われて付き合って、

ただ私はプレゼンやら何やらで忙しい時期で、

イキナリ仕事と俺と、って、疑問をぶつけられたんだ。


「今時の人は、付き合おうって言ってからお付き合いする訳じゃないの?」

「中学や高校ならいざ知らず、私たちの年代であまりないですね~」

なるほど。

好きとか、嫌いから始まる訳じゃないんだな。


「難しいなぁ」

「朝倉」

低い、よく通る声に振り返った。

「はい」

室井チーフが相変わらずの無表情で立っていて、書類を見せて来た。

「これの前年度のデータが欲しいんだが、今日中に揃えてもらえるか?」

見ると、一昨年の企画のデータ。


たぶん、資料室。

そして、今フロアの時計は16:39を指してる。
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