晴天のへきれき?
「お先に失礼しますね」

と一礼する。

「車で送ろうか?」

チーフに言われて、首を振った。

「いいえ。いいです」

一緒にいると、笑っちゃうし。

そりゃ、悪いってもんで。

「じゃ」

チーフの横を通って、オフィスを出た。

出る瞬間、高瀬の馬鹿笑いが聞こえた気がしたけど、

とりあえず、気にせずに着替えを済ます。




エレベーターに乗って一階に着き、社員入口の前でバックを持ち直した時、


バランスを崩したバックから、中身をぶちまけて、呆然とする。


ああ、もう。


やっぱり、ファスナーつきのバックにすべきかな。


「大丈夫ですか?」

初老の警備員さんが近づいて来て、拾うのを手伝ってくれた。

「すみません。どうも、この手のバックは苦手で」

「ああ。この手の鞄ですと、何かを落とされる方は多いですよ」


そうなのか?


やっぱり、お洒落よりは実用的な方がいいかな。


と、思っていた時。

すっと目の前に、手帳を差し出された。


「これも、ですよね」

明るい感じの声にビックリして顔を上げる。

「向こうに落ちてました」

ニッコリとした微笑みはちょっと軽いけど、なかなかいい男だ。
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