晴天のへきれき?
そう考えながら5分くらいした時。

後ろから肩を叩かれた。

「ごめん。ちょっと電話でお客様と話してて」

少し高めの声に振り返る。

「待った?」

田崎氏は微笑んで、首を傾げた。

ああ。

何だか可愛い人だな。

「そんなに待ってませんから」

「やっぱり、朝倉さんは大人だね」

田崎氏は、ニッコリと手を握ってくる。

「面白いお店を知ってるんだ。正面口から行こう」

非常口をくぐる田崎氏に目を丸くした。

「え。でも、社員は正面口は……」

使うと怒られる。

「平気だよ。朝倉さんは制服じゃないし。でも、念のため、見つからないように行こうか?」

「あ、はい」

広いロビーを抜け、大理石風の壁で仕切られた受付の後ろ、公衆電話が並んでいる前をこっそり歩く。



なんか、冒険しに来た気分だ。



それから何気ない風に自動ドアを抜けて、お互いに顔を合わせる。

「何か、探検の気分だったね」

田崎さんの言葉に、クスクス笑いながら頷く。

それからタクシーにすぐ乗って、私たちは繁華街の前で降りた。
< 89 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop