晴天のへきれき?
いきなりの発言にびっくりする。

「しませんよ。そんなもんは、生活してけば覚えるもんだと思うし」

それとも、私くらいの年齢だと、それが普通だとでも?

なかなか、失礼だな、この人。

「……偉いですね~。僕なんかは家に帰るとご飯があるのが理想かな」

うーん。

「田崎さんは、奥さんに家にいてもらいたい派なんですか?」

「そうですね。家を守っていてもらいたいですね」

あー……

なるほど。

うちの親父と一緒か。

思いつつも、だらだらとくだらない話をする。


「田崎さん。明日も仕事ですし、私はそろそろ帰ります」

「え? もうですか?」

伝票を見ながら、お財布を出す。

「終電無くなりますし」

「あ、いや、おごります」

慌てて手を振る彼に、微笑み返した。

「割り勘で。私、おごられるのは好きじゃないので」

「そうですか……」

困った笑顔の田崎さんに、テーブルにお金を置いて立ち上がる。

「それから、昼間のお返事ですけど」

「え……?」

「嬉しいお申し込みでしたけど、お断りさせていただきます」

心底驚いたように、彼は立ち上がった。

「え? ちょっと待ってください。僕、何か悪いことしましたか?」

「別に、何も」
< 96 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop