晴天のへきれき？
「お困りでしょうか、お嬢様」

お、お嬢様!?

低い渋い声に顔を上げる。

見上げる程の長身。きちんと整えられた髪に整った顔立ち。
黒いスーツに身を包んだ男性。

彼の少し鋭い視線が掴まれた腕を見て。
私……それから田崎さんにと向けられる。

「……お嬢様が困っておられます。どうか御手をお離し頂けませんでしょうか？」

やんわりと、だけど断固とした口調に田崎さんの手が緩む。

その隙に手を引き抜いて、サッとその男性の影に逃げ込んだ。

「お前、誰だよ！」

いきり立った田崎さんがその男性を睨む。

彼は落ち着いた物腰でスーツの胸ポケットに手を入れ、名刺を差し出した。

「申し遅れました。私は当店のオーナーをさせて頂いております、一条と申します」


お、おーなー、ですか？

若そうに見えるのに。

「すみません。ご迷惑を」

私の声に、一条氏はちらっと振り返って微笑んだ。

「問題ございません。先程から拝見させて頂きましたが、お嬢様に責はございませんから……」

それから田崎さんを見て、低い声をだす。

「それよりも男性の腕力を持って、力の証明をなさる殿方の方に問題があるかと存じます」

それから一条さんは丁寧に一礼して、出口を示す。

「お代はけっこうです。どうぞお引き取り下さい」

顔を上げた瞬間に、田崎さんを睨んだ。
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