蜘蛛の巣にかかった蝶のようで

「ん?なんか言った?」

「あ、なんでもない、なんでもないよ!」

築山君は強ばった表情からまたとびきりのスマイルに戻った。

「ちょっとトイレ行ってくる!」

「はーい!」

そういうとまた築山君は下に降りていった。


その時。かばんの中のケータイが鳴った。

あわてて取り出すと、1通のメールが来ていた。


それはいつもの送信相手は不明の見慣れたアドレス。

開いてみて、思わず小さく悲鳴をあげた。

『件名 無題

僕を選んで』

きっと誰かのイタズラなんだろうけど、今までこういう内容は送られて来なかった。それになぜだろう…ものすごく…寒気が…。

ガチャッー。

「お待たせ〜。…水谷?どうした?怖い顔して。」

「え?…ううん、なんでもないよ!」

これ以上、築山君に迷惑をかけるわけにはいかない。

「ほんとか?」

「うん!」

ニコッと微笑んだつもりだけど、上手く笑えていただろうか。
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