蜘蛛の巣にかかった蝶のようで
美しくも冷たい蜜
「ただいま〜…。」
重い玄関の戸を開けるとリビングからお母さんが顔をのぞかせた。
「おかえり〜紅葉。大丈夫?」
「なにが?」
「幸也くん。なんかあったでしょ?あんたが学校サボることなんてないから心配で心配で…。」
さすがお母さん。18年も一緒にいただけあって私のことはなんでも知っている。
「んー…。喧嘩ってかもう別れた……のかも?」
「かもぉ?」
お母さんは不思議そうな顔をして首をかしげた。
「紅葉、ちょっといらっしゃい。」
お母さんは私をリビングのソファに座らせた。