蜘蛛の巣にかかった蝶のようで


ーー夜になると家の外から野良猫の声がする。

その声が今日はなんだかうっとうしくて。

電話帳の幸也の名前を見て泣きそうになる。

『辛いことにこそ向き合う。』

お母さんの昼間の言葉に胸をおされ、幸也の番号をおす。

プルルル…プルルル…プルルル…

3回コールのあとにいつもの慣れた声が耳に入ってきた。

「……もしもし。」

「あ……もしもし……幸也。え、えーと、こんばんは……。」

「……おう。」

冷たい声にまた涙が出そうになる。

「…電話出てくれてありがとう。…あのね?」

「……うん。」

「あの画像……なんかの……間違えっていうか……、朝も言ったけど……ほんとに!ほんとに知らないの……。信じて?」

受話器の向こうの幸也は黙ったままだ。

「それとね……。私、本当に幸也のこと大好き。離れたくない。」

「……。」

返事がなくて……。

背中に変な汗が流れる。
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