鬼伐桃史譚 英桃
序章
第一話・鬼伝説
刻(とき)は古(いにしえ)。
場所は和(わ)の国。
嘘か誠か、今となってはそれはわからない。
だが、この話は確かにそこからはじまる。
――鬼。
いつの時代も、この異形なものは存在する。
鬼は人の何倍以上もの力を持つ。
そして形相はみな、どれも醜く、恐ろしい。
鬼は人とは違う身なりをしていた。背格好は人とは変わりないが、皮膚の色が違う。彼らはおどろおどろしい皮膚の色をしていたのだ。
赤黒い肌や青白い肌に、遙か百里(392.727273 キロメートル)まで見渡せる大きな眼は血走り、大きな口からは二本の鋭い牙が生えている。そして頭にも牛のような大きな鋭い角が幾多もあった。
鬼は人びとの暮らしを破壊し、恐怖を糧として生きていた。
と言うのも、鬼は人の負の感情で造りだされたものだったからである。
負の感情。それは恨み。妬み。恐怖。嫉妬。それらが鬼を生むのである。だから鬼がこの世界から消えることはない。