鬼伐桃史譚 英桃
恐る恐る姫の小さな唇に手を翳(かざ)すと、微かに息をしているではないか。
もう二度と我が子には会えないと思っていた。鬼に攫(さら)われ、大鬼の封印を解いた後に殺されるのかもしれないと、悲しみに暮れた。
しかし、自分の目の前には、たしかに桜華がいる。
かぐやの目に涙が溜まっていく。
「殿様……」
かぐやは直ぐさま夫元近を呼び、元近は悲鳴とは異なる妻の声を耳にすると急いで駆け寄った。従者らの手を借りて見事無事に桜華を瓦礫の山から救い出した。
それからふたりは肩を寄せ、抱き合い、たいそう喜んだ。