鬼伐桃史譚 英桃
強大な力を持った鬼は、人間の村を次から次へと襲いました。そんな折、この里にこの和の国の都をお治めになっている蘇芳 元近(すおう もとちか)様が訪ねて来られたのです。
蘇芳様はこう仰(おっしゃ)いました。
――このままではこの国は狂気と化した恐ろしい大鬼に滅ぼされてしまう。木犀殿。どうか、退治屋としての貴殿の力をお借りいたしたい。
そう、元近様はこの座敷で木犀様に話しました。
自体は一刻の猶予(ゆうよ)もない。彼は急いでやって来たのでしょう。額に玉のような汗を浮かべ、木犀様にお話されたのです。
しかしそんな元近様の心情を裏切るかのような無常の言葉が木犀様から告げられたのです。
――残念ですが今回の鬼はあまりにも強力すぎる。
自分の力では討ち滅ぼすことができないと、木犀様は仰いました。鬼はそれほどまでに強鬼と化していたのです。