鬼伐桃史譚 英桃
第二話・薄花桜の君
空には黄金色に輝く力強い太陽と、雲ひとつない青が広がっている。その中を、鳶(とんび)が優雅にはばたいていた。
その空の下。そこに英桃(えいとう)一行はいた。
なだらかな曲がりくねった細い斜面は不安定な足場が続く。三人は足下に注意しながらも先へと進む。
「そんで村を出たのはいいけどよ。これからどうするんだ?」
英桃に並んで歩いている青年、茜(せん)が問う。
「うん、さっき寄った茶店で耳にした話によると、今よりちょうど半刻ほど前に、梧桐(ごどう)様が出陣されたらしい。もうすぐここを通るそうなんだ。これから梧桐様の隊に加わろうかと思う」
いくら忍とはいえ、自分たちはまだ戦の経験はない。ならば戦を知っている武士(もののふ)に習うのが得策(とくさく)だろう。英桃はそう考えていたのだが、南天(なんてん)と茜はいささか不満なようだ。