[短]お祭りは先輩と
俺は紗耶香の手を引っ張って、人が少ない場所に移動した。
紗耶香と俺はなにも喋らない。
やっぱ俺が連れてきたんだし、俺から切り出した方がいいよな…?
「紗耶香、俺に何かいうことない?」
なんか俺、情けねー。
スパッと切り出せねーのかよ、俺は。
「巧…別れて。」
………やっぱりか。
「わかった」
少しは男らしくしよう。
紗耶香が心配しないように。
紗耶香を見るとなんだか悲しそうだ。
俺は紗耶香を悲しませたくて、こんなことしてんじゃねんだよ。
俺はお前が幸せならそれでいいんだ。
君が幸せなら。
「俺、さ。
ずっと紗耶香が好きだったんだよ。
だからおまえが先輩を好きなのも知ってる。
あの人が好きなんだろ?
あ、ほら。こっちに気付いた。行けよ。」
なあ、紗耶香。
お前は俺といて幸せだったか?
「あ、別れたら戻ってこいよ」
変な望みを賭けた言葉。