君の名は
『ねー、のぞみー?とーめいにんげんのことなんか気にしないで早くそれ持ってきてよぉーーー』
どこかで声が聞こえる。
“とーめいにんげん”とは僕のことだ。そう呼ばれてることくらい僕だって知ってる。
僕が“とーめいにんげん”ということはつまり彼女は“のぞみ”というらしい。
のぞみはまだ僕の前から動かない。
なにも言わずに立っている。
根比べしてるわけでもないから
飛んできた紙飛行機をそっとのぞみに手渡した。
のぞみはにっこり微笑んで、去っていった。
人を美しいと思ったのは、初めてだった。