君の名は





1冊読み終わって、日が傾き始めた頃
見たことあるようなひとが遠くの席にいるのを見つけた。



学校での雰囲気とはまるで違うけど、たぶん、のぞみだ。


髪の毛をおろして
眼鏡をかけた
昨日の彼女よりだいぶ幼く見える。

可愛いと思った。



話したこともないのに、可愛い、なんて、彼女に知られたらきっと引かれるだろう。

僕の存在に気づいてくれたといっても
相手は女の子なのだから。

この広い図書館の端っこと端っこ
教室の隅と隅
その距離を崩すことはないだろう。


でも、彼女を見かけるだけで
会えないと思っていた日にその姿を見ることができた、ただそれだけで僕は満たされる。









そんなことを考えていたら
ふと小説から顔を上げた彼女と



目が合った。




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