君の名は
第四話希
学校が休みの日は、図書館にこもる。
ここなら誰にも会わずに、自分だけの世界を持てる。
私は本が好きだ。
本を読むと、からっぽな自分の心になにかふわふわした暖かいものが注がれていくような、そんな気分になる。
知識も知恵も恋のいろはも全部全部本で学んだ。
ここだけは、誰にも邪魔されたくない。
幸せな世界。
そう思っていたのに、
お昼を過ぎた頃、彼がやってきた。
私に気づいたようでもなく、まっすぐと恋愛小説のコーナーに向かった。
そして、彼が手に取った本は
さっき私が読み終わって返したばかりの本だった。
たくさんの恋が詰まったオムニバス。
幸せな恋も報われない恋もせつない恋も
きっと現実で起こることなんてないような
“素敵”がたくさん詰まった宝箱みたいな小説。
彼がその本を選ぶなんて意外で
彼を見ているのがバレないように少し離れた席に移動して。
彼がその本を読み終わるまで彼を見ていた。