残 ―zan―

｢いらっしゃい｣

店主の声が響く。佐々木たちはようやく人に会えたのと、店に着いたのを安堵するように息をついた。

｢今日は友達と一緒なんだね｣

店主は笑いながら話しかける。いつものでいいかい、とまた同じやり取りをこなし、僕専用の席に着く。知人もいつもいる席に着く。

｢兄ちゃんたちは何にする？｣

佐々木たちに尋ねる。各々ラーメンを頼む。店は僕たち以外誰もいない。

｢なんか隠れ家って感じの店だな｣

なんでもっと早くに教えなかったんだよ、と佐々木は秘密基地を見つけた少年のような目をしながら話す。お前らの来たせいで隠れ家ではなくなったがな、と心の中で思う。知人も冷たい笑みを浮かべて答えていた。

｢日比谷たちはいつもここで食べんの？なんか、いつものとかすげぇ常連みたいじゃん｣

佐々木は僕に話しかける。

｢いつもではないけど、結構食べてるよ｣

｢なんか、いつものって頼んだりとか日比谷くんたちってかっこいいね！同い年には思えないよ！｣

女は甲高い声で話かける。わたし、田中美優っていうの！と頼んでもいないのに自己紹介を始めた。僕たちはにこりと、作り上げた笑みを浮かべながらよろしくと言った。