残 ―zan―
佐々木たちを連れてラーメン屋に行った後、僕は一人であの世界へ赴いた。

街外れの一角にある店に着くと、店内から人の話し声が聞こえた。店主の声ではない。

戸を開け、中に入ると他の男性客が4人いた。

僕専用の席は座られていた。

客は大学生ぐらいに見える。おそらく、佐々木がこの場所を教えたのだろう。そうでないと、この店を見つけるのは不可能に近い。彼らのような明るい学生らしい人が自力で見つけることはまずない。

「…今日は他の客がいるんですね」

仕方なく他の席に座り、店主に話しかける。店主は僕の塩ラーメン作りに取り掛かる。

「…佐々木くんといったかな。彼が他の友達を連れてここに来たんだ」

それから学生が頻繁に来るようになったんだよ、と麺を茹でながら話す。
器にスープを流し込み、茹でた麺を入れる。

「最近は、学生のほかにもサラリーマンとかが来たりもするんだ」

SNSの効果だろうね、と店主は言う。これだからネット社会は恐ろしい。僕たちが佐々木を連れて来たのは1ヶ月ちょっと前くらいだというのに。情報が飛び回るのが早い。

店主と話をしている間にも他の客が入ってくる。

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