残 ―zan―
…そうだ、あの女だ。なぜ今まで気づかなかったんだ。

僕たちは佐々木の元へと向かった。佐々木は最近は全く会っていないと言った。


強い胸騒ぎがした。

日が暮れ、夜が訪れた東京を僕たちは駆け抜ける。夜風が寒いくらいだった。僕が大嫌いな人混みを掻き分けてただひたすらに走る。言葉にはしていないが知人にもなにか思うところがあるようだった。


あの裏路地へ入るための道に立つ。

夜は一層暗い。街灯などはない。もうそこは、人間社会とはかけ離れた終わりのない闇の世界だった。

僕たちは一歩、その世界へと入り込む。気を強く保たないと飲み込まれるほどの狂気と哀愁に満ちた闇を歩く。
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