残 ―zan―
どこからともなく、僕たちは手を握った。強く強く握った。


この世界の一角のラーメン屋に着く。

動悸が治まらない。汗が背中を伝う。もしかしたら、知人にこの動悸が伝わっているのではないか。振り返ると、知人は見たことのない、無表情をしていた。僕はその顔に安心を覚えた。

意を決して、ラーメン屋の戸を開く。

中は豆電球だけが辺りを照らしていた。


「…あれ、おかしいな。鍵はしっかりと閉めたはずなんだけどなぁ」

店主がのんびりと呟く。

店主の手には包丁が握られていた。

そしてカウンターの上には夢で見た女が寝ていた。
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