残 ―zan―
「いらっしゃい」

店に不似合いな、元気で張りのある声に迎えられた。この店の店主のようだ。他に客は見当たらない。僕たちと店主の3人だけだ。

「注文は?」

椅子に座り、僕たちは壁に掛かっているメニューを見た。味噌、醤油、塩、王道のラーメンが並んでいた。値段も悪くない。

「醤油頼みます」

「僕は塩で」

はいよ、とラーメン屋の店主らしい返事をして準備に取り掛かった。

ぐるりと店内を見渡す。店内は薄暗く、こじんまりとして、年季を感じさせる作りだった。入れて20人前後だろうか。決して広くはないが、カウンター席とテーブル席のある、老舗のような店だった。

僕は気分が高揚していた。人が少なく、街外れのこの店をなぜもっと早くに見つけられなかったのだろう。
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