残 ―zan―
店主は微笑みながら、

「企業秘密だよ」

と答えた。そのとき、なにかが僕の中に影を落とした。店主の微笑を見たとき、その微笑がなぜが引っかかった。

スープの旨みが舌に広がっていった。

―――
「今日ラーメン食べないか」

知人が荷物を片付けながら言う。あれから僕はラーメンやったから遠ざかっていた。あのときの、店主の意味を含んだような微笑がなぜか脳裏から離れない。

「今日はいい肉が入るらしいんだ」

知人は最近の昼はほとんどがラーメンらしい。

「じゃあ、久々に行こうかな」

なんとなく、行きたくないような感じがある。でも、あのラーメンを食べたいという欲求もあった。

いい肉、というのは出汁に使う物だろうか。ラーメン事情には詳しくないが、あの店も店主もスープに力を入れているのはわかる。

僕たちは街へと向かう。異世界のような、不思議な街へと入って行く。

そのとき、誰かから呼び止められた。
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