残 ―zan―
「日比谷と藤河?」

後ろを振り向くと同じ講義を取っているやつがいた。誰だったか、こいつは。見覚えはあるが名前が出てこない。

「お前らもこれから昼か?」

講義のやつが近付いてくる。その後ろに見覚えのない男女が2人いた。

「あぁ、そうだ。佐々木もか?」

そうだ、佐々木だ。講義でも、外でもギャーギャー喚いているうるさいやつだ。

「なあ、お前ら何食べんの?ここら辺人が多くてなかなかいい店見つかんなくてさー」

着いてくる気か。やめてくれ。知人と目を合わせる。彼も困っているようだった。あの店を教えたくはない、と目で訴えてきた。でも、他の良さそうな店を知っているわけでもない。佐々木が引く気配も微塵も感じられない。

「僕たちはラーメン食べようと思って」

仕方なく、答える。

< 9 / 22 >

この作品をシェア

pagetop