キミに言いたかった言葉


予感は当たっていた

皐月くんも同じアパートに住んでいること

コンビニで会った時から
もしかして…って感じてたけど


アパートに入り、エレベーターに乗り込んだ

「杏奈ちゃん、何階?」

皐月くんがボタンを押すかのように指をさしていて、なんだか悪いなと思いつつ、私は答えた

「5階…です」

「ん、わかった」

するとやはり皐月くんは5階のボタンを押してくれた


そして沈黙が続く

隣にいる皐月くんをチラッと見上げた

皐月くんは正面を向いていて、何か考え事でもしているかのように見えた




…あれ?

ふと、エレベーターのボタンの方に目をやった


5階のボタンしか光ってない…
ってことは、皐月くんは5階のボタンしか押してないってことだよね



…私に…住んでる階を知られたくないからの行動なのか…

もしくは…



『5階です』

エレベーターのアナウンスが流れた


私は、ハっとして、急いでエレベーターを降りた


そして後ろを振り返った

すると皐月くんも普通に降りていた


「ん?どうしたの?」


「…皐月くんて…」


「俺も杏奈ちゃんと同じ5階だよ」


皐月くんは、私が疑問に思っていたことがまるでわかっていたかのように答えた


「…やっぱりそうだったんだ」

「ほら、行こう」

「う、うん」

私はそのまま奥へ進んだ

私は自分の部屋である1番奥の部屋まで行き、鍵を取り出した


…皐月くんはどの部屋なんだろう

一つの階に部屋は5つあり
全て横に並んでいる

エレベーターに近い部屋なのかな


…でも考えてみたら、皐月くんが別れ際に何も声を掛けてこないなんて変だなと思った

エレベーターに近いんだったら、もう声掛けてくれてるはずだよね…?


私は進んできた方を振り返った



すると…


「杏奈ちゃん」


声を掛けてきた皐月くん

皐月くんはドアノブを握って、ニコっと笑って言った


「改めまして、隣同士、よろしく。じゃあまたね」


そして自分の部屋に入って行った


ガチャンっ、という扉の音が響き渡った



「…お、お隣さんて……皐月くん…だったんだ…」

それは思わず声に出てしまった

あまりに驚いて、そのまま1分ほどそこで固まってしまった

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