キミに言いたかった言葉



----ピンポーン


……ガチャ


「はい…ってあれ?杏奈ちゃん」


「皐月くん、遊びに来ちゃいました」

「来ちゃいましたって…」


「へへっ」


…もしかして、変なこと企んでるとか疑われたかな?

私は笑顔を絶やさないようにした


皐月くんは一瞬目を逸らして、何か考えていたようだったが
扉を開き切って言った


「散らかってるけど、どうぞ」


「ごめん、ありがとう」


何だか急にお邪魔しちゃって悪い気もした

だけど、そんなことは今は考えないように素早く靴を脱いで入った


部屋に入ってみると、黒を基調とした、意外とシンプルな部屋だった

私の部屋と間取りも同じはずなんだけど…こうも違うものなんだな
なんだかかっこいい…


それに、皐月くんは散らかってるとか言ってたけど、全然!!
雑誌が一つ床に置いてあるくらいで、片付いてる


机には教科書や問題集などが置いてあって、今まさに勉強していたところだったよう…


やっぱり、根は真面目なんだなぁ


「どうしたの?そんなとこで立ち尽くしちゃって」


「えっ?!…ああ、いや、その」


皐月くんはキッチンの方から話しかけていた

「とりあえず適当に座りなよ」


「う、うん」


「冷たいお茶しかないけど、それでいい?」


「あ、うん、ありがとう」


「ん」


お茶を注ぐ音が聞こえる

気つかわせちゃってる気がするなぁ…


「はい」

いつの間にか横に来ていた皐月くん

お茶の入ったグラスを渡してくれた


「ありがとう」


「ん。テレビでも観る?」


「え、いや…てかもしかして私、勉強の邪魔しちゃったんじゃないかな?」


皐月くんは自分の分のお茶を口に運んだあと、グラスを机に置いて言った


「いや、丁度休憩しようと思ってたし」

「…ならいいんだけど…」


本当にそうなのか、それとも私の為についた嘘なのか…


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