キミに言いたかった言葉


それから私はお茶を一口飲んだ


ふと、机の問題集に目がとまった


「これって学校の課題?」

「そうだよ」

「へぇ〜こんな難しかったっけ?」

「そ?…杏奈ちゃんて学年順位どのくらいなの?」

「うーんと、真ん中くらいかな。皐月くんは?」

「俺は〜…入学してすぐのテストは確か2位だったかな」

「ええっ!2位?!皐月くん凄く頭良いんだね!」

「割と勉強嫌いじゃないからね」

「そうなんだ〜。てか私、この問題解けないかも」


高1でこんな問題あったかな?
私の頭どうなってんの?


「これは、この公式当てはめたらいいんだよ。この公式覚えない?」

「あーあったような……」


その時私は気付いてしまった

いつの間にかすぐ目の前には皐月くんの顔があることに

気のせいか、何だか脈拍も上がってる気がする


皐月くんも、反応がなくなった私に気付いたようで
私の目をジッと見てきた


「…どうかした?」


「う、ううん!何でもない!」


結局私の方から目を逸らしてしまった

それを機に、皐月くんはお茶の入ったグラスを手に取った




そして、ふと疑問が浮かぶ



「他の女の子たちと遊ぶ時にすること…私にはしないの?」



皐月くんは、お茶を飲んでいる最中だったようで、気管に入ったのか噎せ出した

そして私も我にかえる


私、とんでもないこと口走ったんじゃない?!


でも、女の子と遊んでるって…そうゆうことだろうし…

私の了承を得れば、触ってくれるのかなって…



皐月くんの噎せも止まったようだった


「…杏奈ちゃん、俺に触ってほしいってこと?」


「そ…うなのかな?…でも他の女の子にはキスしたりとかもするんでしょ?…なのに私には指一本も触れないなんて…何だか変な感じがして」


皐月くんは私を見つめながらも、何か考えているかのようだった



「いいよ」


「へ?」


「キス、しようか」


「へ…」


予想していたはずなのに、覚悟が出来ていなかったようだ
はっきりと返事できない


皐月くんが私の右肩に片手を置いた



「待って!」


私の張った声に皐月くんも少し驚いたようだった


「やっぱりやめる?」


皐月くんがふっと微笑った

私にはやっぱり無理でしょって言われてるみたいだった


「違う、そうじゃなくて…」


そう言うと、私は両手で自分の頬を叩いた

そして意を決した


「ドンと来い!!」


また無意識に、正座で両手の握りこぶしをそれぞれの両膝に置いていた


皐月くんは、さすがにさっきの様には笑わなかったけど
低く優しい声で言った

「んじゃ、目閉じて…」

言われた通り私は目を閉じた

力まないように注意して

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