忍び寄るモノ
「おはよう静ちゃん」
「おはよう奈々ちゃん!」
教室の扉を音をたてて開ければ笑顔で友達の遠藤奈々(えんどうなな)ちゃんがいて私は笑う。
奈々ちゃんは一年生の時から仲よくしてくれてる一番の友達。
焦げ茶色のふんわりボブヘアーにぱっちりした焦げ茶色の目の可愛い女の子で、性格はしっかり者だと思う。いつも私の心配をしてくれる優しい友達。
奈々ちゃんは私のほうをじっと見て「また夜更かししたでしょ」とムッとしたような顔をした。
「テストが終わって返却も終わったからつい夜更かししちゃった」
「ついじゃないよ! いつもそうやって夜更かししてるんでしょ? 時々は休まないとダメなんだからね」
「うん。気をつける」
私がそう返しても奈々ちゃんは眉を寄せてこっちを見たままで、慌てて何か話題はないかと考える。
うーん。私からじゃあ怖い話とか都市伝説とかしか思いつかないや。
今の奈々ちゃんに言ったらもっと注意されそうだなぁと思った私は笑ってごまかす。
「もう……」
「あっ、ほら先生来たよ!」
タイミングよく教室に入って来た先生に助かったと思いながら私は奈々ちゃんに「またね」と自分の席に向かう。
「先生くるの早くない?」
「ほんとほんと。何かあったのかな?」
ガタガタと音をたててみんなが急いだように座る中で聞こえた会話に、椅子に座りながら私も不思議に思った。
いつもならチャイムがなる少し前に来るのに今日は十分近くも前。
先生は私達のほうをぐるりと見て唇を震わせた。