忍び寄るモノ
今日の帰り道は急ぎ足。
三人とも傘を持っていたけど雨が強いから早く帰ろうということになって会話はほとんどなかった。
奈々ちゃんと別れた後に雨はますます強くなって私と岡本君は傘をさしたまま走り出す。
小さい時から走るのだけは得意だから岡本君の隣をペースを落とさずに走っていたら声をかけられた。
「折笠さんって足速いんだ」
「小さい時から走るのだけは得意なんだ。中学の時にひったくりを追いかけて追いついたこともあるんだよ」
お母さんと買い物をしてたらお母さんのバックを奪われて思わず追いかけたのを今でも覚えてる。
だけど後から警官の人とお母さんに危ないってすごく怒られたんだよね……。
思い出して複雑な気持ちになっていたらいつの間にか家の前に着いていて私は岡本君のほうを見た。
私と同じように足を止めた岡本君は眉を寄せて怒っているような顔をしている。
どうしたんだろうと思っていたら岡本君は顔を横に向けてしまう。
「そういう危ないことはしないほうがいいと思う」
「え……」
声まで怒っているような感じがして私は岡本君の横顔を見上げた。
顔を動かして私と向き合う形になった岡本君は眉を寄せたまま。
雨に少し濡れた顔が何だか泣いているように見えて私は困った。
年の近い男の子の泣き顔なんて見ることもないし、励まし方なんて知らない。