忍び寄るモノ

ここは何かボケるべき……?

どうしようかなと考えていたら岡本君が私の方に傘を持っていない右手を伸ばしてきて途中で引っこめた。

ますます岡本君のことが分からなくなってじっと見てみると、くしゃりと顔を歪ませた岡本君が顔を隠すように傘を動かしていく。

お互いに傘をさして距離をとっていることもあって岡本君の顔が見えない。

「何かあってからじゃ遅いんだ。いなくなったらもう──」

引っこめた右手をギュッと握りしめ、岡本君が震えた声で言う。

名前を呼ぶと肩を揺らして「はは……」と小さな声で笑い声をもらした。

「……ごめん。いきなり変なこと言ったりして」

「ううん。変じゃないよ! その時お母さんと警官の人にすごい怒られたから岡本君のほうが普通だと思う」

「そう……。それじゃあ今日の夜は保護者説明会で親がいなくてもおとなしく家にいるんだよな?」

「それはさすがに外に行かないよ! この天気なら普段でも行かないから!」

いくらオカルト情報をもらってもこんなに雨が降ってたらさすがに行けない。

風邪をひくのは嫌だしお母さん達によけいに心配かけちゃうから。

私が勢いよく返すとやっと学校で見たことのある岡本君の笑顔に戻ってホッとする。

「明日からの登校とかはもしかしたら今夜の保護者説明会で変わるかもしれないから、何か分かったら後で連絡するから」

「あ、うんっ、よろしくね」

「また明日」と背中を見せて遠くなる岡本君の姿がなんだか寂しそうで見ている私も寂しくなった。

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