忍び寄るモノ

傘についた雨水をはらって家の中に入った私は傘を玄関に置いて靴を脱ぎ、鞄も玄関の近くに置くと制服のままで一階の奥にある仏間に向かう。

「ただいま」

部屋に入って声をかけても返ってくる声はない。

私はそれを気にすることなく仏壇の前まで歩いて座った。

仏壇には写真たてに入った写真が一枚。小学生姿の双子の弟が笑っている。

弟の明(あきら)は小学生の時に交通事故にあってその日に亡くなってしまった。

男女の双子だからか私と性格は違っていたけど見た目はそれなりに似ていて、遊びに行く時はいつも一緒で。

小さい時からオカルト好きな私の話を嫌がることなく聞いてくれてた。

「明も高校生になってたら岡本君みたいにカッコよくなっていたかもね」

今はもう想像することしかできないけど、もしも明に会うことができたら一回でいいからまた話してみたいよ……。

私は歪んだ視界を直すようにゴシゴシと両目をこすって立ち上がる。

お母さんに泣いた顔は見せられないからしっかりしなくちゃ。

「またくるね」と写真をじっと見てもう一度声をかけて私は仏間を後にした。

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