忍び寄るモノ
私と奈々ちゃんが驚いてそれ以上の言葉が出ないでいるとひまわりちゃんが話を続けていく。
「襲われたのは一年の安田響也(やすだきょうや)君なんだけど……襲われたのは安田君の家の玄関先だって」
「家の前で襲われるなら防ぎようがないじゃない……」
奈々ちゃんが弱々しい声で呟くように言うとうつむいた。
安田君とは何回か話したことがあるけど真面目な優等生って感じだった。
だけど優しそうで誰かとトラブルを起こしそうな人には見えなかったんだけどな。
「荒木先輩の時と同じ犯人なのかな? 荒木先輩と安田君ってタイプが違うと思うんだけど……」
「折笠さんもそう思う? ワタシも共通点がなさそうだなーって思って──っ」
「危ないっ」
急に誰かがひまわりちゃんにぶつかった。
ひまわりちゃんはバランスを崩して私達のほうへとふらついたけど私と私の声で顔を上げた奈々ちゃんに支えられて転ぶことはなかった。
「危ないなぁ!」とひまわりちゃんが勢いよく言ってぶつかった相手を睨むように見上げると相手はなんと岡本君だった。
岡本君はなんだかぼんやりとした様子でひまわりちゃんの声が聞こえていないみたい。
「岡本君聞いてるの!?」
ひまわりちゃんが少し声を大きくして言うとようやく気づいたのか岡本君がひまわりちゃんを見下ろした。
「ああ、ごめん……」
「……岡本君具合でも悪いの?」
ひまわりちゃんの言葉につられるように岡本君を見上げれば確かに顔色が悪そう。