忍び寄るモノ

「岡本君……?」

「折笠さんには悪いけど俺には信じられない。死後に幽霊になって出てくるなんて」

ギュッと唇を結ぶ岡本君に私は何も返せなくなる。

信じる信じないは人によって違う。

私は信じているけれど見たりしたことはないし証明することができる物でもないから、岡本君の意見に反対も賛成もできない。

松嶋さんは手を組みかえて「俺もそういった話は信じていない」と言った。

「もし本当にいるなら彼は俺や犯人のもとに姿を現すだろう。とりあえず、ラジカセとカセットテープはこちらで預かって調べさせてもらうことにするか。後で君達から指紋採取を行うかもしれないからそのつもりでいてほしい」

「分かりました」

「俺も大丈夫です」

二人頷き返すと松嶋さんは目を細めて「ありがとう」と言うと椅子から立ち上がった。

「話はこれで終わりだ。お詫びにもならないだろうが帰りは送って行こう」

「さあ」と促されて私は立ち上がる。

だけど隣から大きく動く気配がなくて私は岡本君のほうを見た。

岡本君はうつむき加減でテーブルを睨むように見ているみたい。

そしてそのままの状態で口を動かした。

「俺が左利きということには何も言わないんですか……?」

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