忍び寄るモノ
忍び寄るモノ
手洗いとうがいをすませて制服から普段着に着替えた私は居間のソファーに座ってお母さんの帰りを待つ。
スマホで何か事件の情報がないかを調べながら時間を過ごしていたけれど、いつもならそろそろ帰ってくるだろう時間になっても玄関から扉が開く音はまだ聞こえない。
お母さんが出かけてまもなく雨がポツポツ降りだしたからよけいに心配だった。
「何もないといいけど……」
誰もいない部屋で呟いてみても言葉が返ってくることはなくて、分かっているのに何だか寂しくなる。
気分を紛らわせるのにジュースでも飲もうかなと思ってソファーから立ちあがった瞬間、近くから物音が響いて肩がビクンとはねた。
「明の写真……?」
居間にある背の低い戸棚の上に置いてあった写真たてがふせるように倒れていて、私は近づいてそれをもとのように直しながら背中が寒くなったような気がしてくる。
まさかお母さんに何かあったんじゃ──……!
「! 着信だ……!」
テーブルに置いたスマホから着信メロディーが鳴り響く。
私は慌ててテーブルの所に戻って電話を受けた。
「もしもしお母さん!?」
何時もより早口で話した私の耳に届いたのはお母さんの声じゃなくて。
「──もしもし静さんですか?」
「え……?」