忍び寄るモノ
でも生徒じゃないお母さんが誰かに襲われるなんて……。
柴田さんが通っていた学校の生徒の親だし同い年だったから?
それともお母さんと柴田さんに何か共通点がある?
……私が調べたりしてるから?
考えても分からないことが多い。
とりあえず奈々ちゃんと岡本君に家族の人も気をつけてってメールを送らないと!
岡本君は私と一緒にカセットテープを聞いてるから特に危ないかもしれない。
私はスマホを持っていた左手に力を入れて顔の前側にもってきて急いで右手の指で画面に触れていく。
送信すると二人ともわりと早くメールが返ってきた。
「何かあった?」と書かれていて私は「詳しい話は明日するね」と返す。
お母さんが帰ってきたらまずは無事な姿を確認して、それから話を聞いてみたい。
私は玄関があるほうを何回も見ながらお母さんが帰ってくるのをじっと待った。
***
「心配かけてごめんなさいね?」
頼成さんと一緒に帰ってきたお母さんは右腕に包帯を巻いていながらいつものような笑顔で私の頭を左手でなでてくれた。
「お母さん大丈夫なの……!?」
「ええ。強く力を入れたりしなかったら大丈夫よ」
「よかった……」
思ったよりも元気そうなお母さんに私は泣きそうになる。
お母さんは頼成さんから重そうなビニール袋を左手で受け取ると「晩ご飯作らなきゃね」と台所へ歩いていく。