忍び寄るモノ

容疑者はまだ浮かばずかぁ……。

上の空で過ぎていった午前の授業の後、私は急いでお昼のお弁当を食べてスマホの画面をかじりつくように見ていた。

荒木先輩の事件はいくつものネットニュースにすでにとりあげられていて色々な情報があふれてる。

指先でスクロールしていくつかのニュースサイトを見ていくと他殺の可能性が高いこと、凶器が見つからないこと、容疑者が浮かばないこと、この三つがどこも共通みたいだった。

「もうニュースになってるの?」

「うん。ネットニュースだけでもすごい数だよ。だけど容疑者はまだ浮かんでないみたい」

ご飯を食べ終わってお弁当箱を袋に入れる奈々ちゃんにそう返すと奈々ちゃんは眉を寄せて小さくため息。

購買の近くにあるこの飲食スペースも今日は使っている人が少なくて変な感じ。

いつもなら時々先生から注意されるくらい人の声がしているのに今日はみんなぼそぼそと小声で話してるからよけいに変。

「怖いね。どこに犯人がいるのか分からないなんて……」

「――犯行場所もまだ特定されてないみたいだし学校の中か外か分かるだけでも違うのになぁ……」

お弁当箱を袋にしまってテーブルのはじに置いて腕をさするように手を動かした奈々ちゃん。

それを見た私はうんうんと頷いてまたスマホの画面に顔を戻す。

もし学校の中が犯行場所なら学校関係者の確率が高くなると思うし気のもちようが変わってくると思うから。

といっても、もしも学校関係者が外を犯行場所に選んでいたとしたら油断はできない。

そう考えるととにかく身のまわりには気をつけたほうがいいのかも……。

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